陰徳を実行する
一日(いちじつ)示して曰く、人は必ず陰徳を修すべし。・・・
陰徳を修すれば必ず冥加顕益(みょうがけんやく)あるべし。
以上は「正法眼蔵随聞記第三」にある道元禅師が高足の弟子に語られた言葉です。ここでは
人知れずに隠れた善行を積み重ねて実行することの大切さを説いておられます。
このことは仏道実践者のみならず一般の私どもにとっても重要な教えでありましょう。
儒教の「積善の家には必ず余慶あり、積不善の家には余殃あり」との言葉もよく
知られております。陰徳とは良き行為をしたのだから、他人からそれなりの評価を得たい
という功利的な観念を持たない実践という意味です。結果をあてにせず、しようとしている
行為そのものの純粋さを尊重する行いです。良き先人たちが行ってきて伝えてくれた善行
そのものを尊んで、人知れず着実に積み重ねていくものです。その実践のなかに
人知れずこみあげてくる人生の喜びがある。そういう意味であると受け止めたい佳言ですね。