年頭所感
「禽獣蟲魚、愛すべきものも多きが中に、わけて人の心を惹くものは犬なり。
生れ出でたる時の、眼は葛餅の如く、聲は篠笛の如き頃より、はやその姿は
畫となり、其の態(ようす)は詩となるに堪へて、老いさらぼへたる暁の、
すさまじき高僧の如く、悟りたる哲人の如くなる日は、如何なる念(おもい)
を懐き、いかなる情(こころ)を有てるやと尊し。」(幸田露伴著 犬の讃)
明けましておめでとうございます。
今年は干支でいうと戊戌(ぼじゅつ)の年ですね。それから明治維新から
150年という節目で、慣れ親しんだ平成という年号も今年限り。
時代も確実に移り変わり、こうして時の流れを刻んでいくものなのでしょう。
本年度は久し振りに檀信徒さんを引き連れての団体旅行を副住職が企画しま
した。奈良の東大寺で毎春恒例となりました千僧法要に参加します。合わせて
桜の名所と名高い吉野の金峰山(きんぶせん)寺(世界文化遺産)にも足を向け
ることとしました。
詳しい案内状を同封しておりますので、ぜひご検討くださるとありがたいです。
千僧法要は住職が福島県曹洞宗青年会の会長時代に始まりましたので、懐かしくも
あります。各宗派の垣根を取り払って300名以上もの青年僧侶たちが一致団結し
ての盛大なお祭りですので、一見の価値がある大法要です。
あれからもう30年も経過しているですから、立派な伝統行事として根付いて
いることは喜ばしいことです。
戌年に因んで文豪幸田露伴先生の名文を紹介しましたが、本年もあいかわらず
昨年同様のご愛顧をお願いしまして、年頭の挨拶と致します。
平成30年正月元旦
医王寺三十世住持 村上徳栄合掌